溺れる恋は藁をも掴む
 あなたは、ひょいと私の身体を抱き上げる。

 「えっ、アキ!!」
 
 ヤダぁ……これって、女子憧れのお姫様抱っこじゃないの!!

 うわぁ〜恥ずかしいよぉー

 そんなあなたに私のドキドキは伝わってるの?

 「重くないの?」

 「全然!
あとは、ベッドでね……華」

 ダイエットしていて良かったよ。
以前の私なら、アキより重たかったかも……

 ひゃあ……恥ずかしい!

 あなたは慣れた部屋を私を抱いて静かに歩いてゆく。

 私はあなたの腕の中。

 あなたの香りに包まれて、そっと目を閉じた。

 こうしていると、海が見えてきたよ。

 穏やかな波の音も聞こえる。

 空を見上げると、満月の月明かりが私達を照らしている。

 また、あなたは神秘の世界(深海)へと私を誘う(いざなう)

 海の底で私達は自由に泳ぐのね。

 この瞬間(とき)だけは、全てのしがらみを捨て、思うがまま、流れに逆らわず、ありのままになる。

 シーツの波を掴んで、あなたを受け入れた。

 こうしていると、人魚姫になった気分よ。

 あなたに見つけて貰って、優しくされて、また、恋をした。

 恋を全うしたかった人魚姫は、声と引き換えに、人間になったわ。

 決して、愛を言葉にする事もなく……
純粋な愛は、恋する相手には伝わらずに、最期は、海の泡となって消えてしまった。


 辛いよね……
好きな人がこんなに近くにいるのに、真っ直ぐな想いを伝えられないなんて…

 
 純粋に人を愛せるって尊い事なんだよ。

  だって、ONLY YOU なんだもん。

 

 

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