溺れる恋は藁をも掴む
 愛しい身体が重なり合い、余韻は身体と心に刻まれてゆく。

 私はまだあなたの腕の中。
疲れたあなたは、寝息をたてて眠りにつく。

 そんなあなたの寝顔を幸せな気持ちで眺め、私も眠りにつく。


 翌朝、カーテンの隙間から爽やかな朝の光が射し込む。

 目を開けて、朝の最初の挨拶を交わす。

 「おはよう、華」

 寝ぼけ眼で、目をこすり、朝を受け入れるアキ。

 「アキ、おはよう」

 今、私どんな顔してる?
あなたにちゃんと笑顔で言えてるかな?


 あなたの目が完全に覚めないうちに、裸を隠さないと恥ずかしいね……

 あなたは、また自分の方に引き寄せて、キスをした。

 もう……ベッドから出れないよぉ……



 ねぇ、アキ……
これが、一夜を共にした男女の普通なら、この普通にずっと憧れていたんだよ。

 セックスの途中で、不意に身体を離され、置いてけぼりにされた私は、『どうか、最期まで…この腕の中で過ごせます様に』って、願ってしまうの。

 安心出来る、愛しい朝を迎えたいってさ…

 それが叶って、また世界が変わったんだよ。


 ーーアキのお蔭なんだよーー


 女に生まれて良かったって思えたよ。





 

 
< 183 / 241 >

この作品をシェア

pagetop