溺れる恋は藁をも掴む
 百合の手紙を何度も読み返した。

 日が暮れて、真っ暗になっても、百合の部屋から動けなくなっていた。


 ピンク色の便箋に書かれた、百合の文字を見ても泣けてきた。

 百合の真実を知り、ショツクも受けた。

 でも、一番心に衝撃を受け、苦しくて辛かったのは、もう、二度と百合に会えないという事だった。

 無駄だと分かっても、百合の携帯に電話を掛けた。

 解約されたと虚しい音声が流れた。

 いたたまれなくなり、手紙を握り締めて声を上げて泣いた。

 嘘をついていた百合を責めたりしない。

 心の何処かで、こんな日が来てしまうんじゃないか…………?
って予期していた不安もあった。


 ここまでの秘密が隠されていたなんて、考えもしなかったけど、記憶を辿れば辻褄が合うような気もした。


 俺の頭に巡る百合との記憶。



 なぁ、百合……

 俺は百合にちゃんと優しく出来てた?
百合はなんで俺に助けを求めなかったの?

 こんなサヨナラあるかよ!!
 もっと俺を頼れよ!!
 どうして、言ってくれなかったんだよ!!
 二人で考えて乗り越えるっていう、選択肢はなかったのかよ!!

 百合、帰っこいよ………

 『ごめん、忘れ物しちゃったよ!』
陽気なサザエさん顔負けの、お前の笑顔を見せてくれよ!

 百合…………

 百合を失った寂しさは、この世の終わりなんじゃないか?と思うくらい、俺の心に影を落としたよ……
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