溺れる恋は藁をも掴む
 寂しさに正直になって、届かぬ想いは心底に置いたまま身体を求め合った。

 互いの身体を愛撫しあって慰め、互いを包み込む様に抱き合い、欲しがる身体は欲求そのものをぶつけ、果てるまでソレを辞めようとしなかった……

 そんな時間が莉緒と俺には必要だった。

 そんな時間があったから、心の隙間を隠してこれたんだ。




 「晶、もう、私が居なくても大丈夫だよね?」

 「……あぁ」

 「晶とのセックス好きだったな……
どうしょうもない男を3年も気長に待てたんだから」

 「どうしょうもない男なのに、3年も待ってる莉緒はかなりのどMだな!

 どうしょうもない男に見切りをつけられるくらいの強さも持てよ!」

 「弱くて愚かだから、生きる意味を必死に探せるんじゃない?

 そういう生き方も人間らしくていいじゃん!」

 そう言って、莉緒は笑った。

 「いい女なのに勿体無いね!」

 「天は二物を与えずとはこの事ね!

 どうしょうもない男でも、自分が見限るまで、友達の忠告すら馬の耳に念仏。
 それでも、晶の前では素直になれた。
弱くなって寂しくて誰かに温めて欲しい時、晶に初めて抱かれたわ。
 ーー最高の理解者にもなれたーー」


 「俺も莉緒の前では弱音も吐いたし、情けなくもなれたよ。
 俺にとっても莉緒は最高の理解者だった!」

 「笑顔で友達に戻れる」

 「俺もだよ。
莉緒、有難う!」

 「ねぇ、晶の好きになった子はどんな子?」

 「あっ、うーん……
例えなら、満月みたいな子かな?
 穏やかな感じてさ……
傍に居ると自然に癒されてゆくんだ」

 「百合さんがお日様で、その子は満月かぁ……
 晶を優しく照らしてるんだね。

 心が綺麗な子なんだね。

 了解!

 晶、今度は離すなよ!」


 「了解!」




 いい女の後ろ姿を見送った。
背筋を伸ばして、真っ直ぐ綺麗に歩く。
長い黒髪が揺れていた。

 そんな彼女を見て、振り向く人も少なくない。

 キツめな美人の莉緒。
でも、本当は繊細な心の持ち主。


 不器用な生き方を自ら選ぶ。
 それでも俺は、カッコイイ女だと思うよ。

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