溺れる恋は藁をも掴む
 莉緒と別れた後、久しぶりに実家に顔を出した。

 食卓で宅配ピザを取って、笑いながら頬張る母と弟が居た。

 「ただいま…」

 「あら、晶、お帰り!」
 
 明るい母の声。

 「兄貴、お帰り。
飯、食った?」

 高校三年生の弟の(柊)が、俺を見て声を掛けてきた。

 
 柊の進路が決まったらしい。

 俺は、この頃に親父を亡くして、百合に恋をしていたんだよな……

 柊を見てると、まだまだ子供だったんだと実感する。

 親父が生きていた頃は、滅多にピザなどの宅配などは取らず、仕事をしてきた後でも、台所で料理を作っていた母。

 今の母が本来の姿なのかもしれないな…

 母と柊はよく似てる。
マイペースでおっとりしている。


 「帰ってくるなら来るって連絡くらいしなさいよ!
 休日はゆっくりするって、柊ちゃんと決めてるから、ピザしかないわよ」

 「兄貴が帰って来るなら、L頼めば良かった」


 オイオイ! そういう問題なのか?
呑気な二人の空気に包まれた。

 「寿司くらい取れば?
俺、奢るから」

 「ラッキー!」
と柊は大喜び。

 「あら、いいの?」
と言う割には遠慮しない母。

 結局、寿司をご馳走する事になった。


 元気で何よりだ。
たまには家族サービスもしないとな。

< 228 / 241 >

この作品をシェア

pagetop