溺れる恋は藁をも掴む
 山の手線に乗り、新宿まで出た。
人混みを掻き分け、歌舞伎町の道を少し歩いたところに、手作りハンバーグの店があった。

 短大生の頃は、よく友達と新宿まで買い物などに出て、このお店でご飯をよく食べた。

 路地裏の目立たないビルの地下を降りた場所にあるので、穴場といえば穴場。

 ごった返しになる昼食時も、割と席が空いていて、地下だから少し暗いイメージを受けるが、センスのいい照明で店内は明るい雰囲気を醸し出している。
 何よりも、肉料理が美味しくて安いのがいい!


 店員さんに席に案内されて、向かい合わせの席に座る。

 誠治さんの顔をやっと正面から見れた。

 二人きりは緊張する。

メニューを見ながら注文を決めた。


 「華ちゃんのお勧めは?」
と聞かれた。

 「チーズハンバーグですかね?
 私、チーズが好きなんですよ!
ハンバーグにトロトロのチーズが乗っかっていて、美味しくてお薦めかな」

 「それは、美味しそうだ。
じゃあ、俺はそれにしょう!」


 私もそれがいい!


 チーズハンバーグのセットを頼む。
ライスかパンも選べて、飲み物とミニサラダがついてくる。

 アイスコーヒーを先に二つ頼んだ。


 店内は、ハンバーグの焼け時の、肉汁のいい香りが漂い、食欲をそそる。
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