溺れる恋は藁をも掴む
 「苦しい思いをさせて、ごめんね。
 ーー華ちゃんに謝るしかないーー

 君をちゃんと愛そうと思ったんだ。
ーーだけど、無理だったみたいーー
本当にごめんなさい……」

 あなたは深々と頭を下げて、私に謝った。

 はい、そうなんですか? 頑張ったけど……
私の失恋が決定みたいですね……

 クリスマスの夜に………
21歳の誕生日の夜に…………


 冷え込む寒さの中で、予め、イヤな予感はしていたけど……

 それでも、現実を受け入れるのは、ショツクだった。


 無言でその場を駆け出していた。
これ以上、惨めになりたくなかった。


 走ってきたタクシーに手を上げて、乗り込んだ。

 とにかく、この場を早く離れたかった。


 タクシーに乗った後、行き先を告げたら、急に涙が溢れ出し、嗚咽が漏れそうな口元をマフラーで押さえた。



 無口なタクシードライバーに感謝しつつ、私は後部座席で溢れ出す涙を拭った。
< 92 / 241 >

この作品をシェア

pagetop