溺れる恋は藁をも掴む
 「泣くほど好きで、振られたんならさ……
その原因がデブだからって思うなら、なぜ、痩せて見返そうとしない?

 痩せて綺麗になって、そんなへなちょこED野郎を後悔させてやんなよ!!

 華、あんたのそういうマイナスオーラたっぷりの縋り付きのスッポン度がさ、相手の男をいい気にさせる、お手軽女っぷりが豊富に出てたんじゃないの?」

 「そこまで‥‥言わなく‥も‥いいじゃん!!」

 「いい?
私は華の友達だから言うのよ!
 いつまでも、ダメ男にメソメソメソ子で暗くてお通夜モードのあんた!

 女はね、友達の失恋話に同情的に聞き耳立てるけど、実際はね……
そんな華を見て、『これじゃ、振られても仕方ないわ』って部分は隠すのよ!
 ねぇ、それは親切なの?
ーーいいや、親切なんかじゃないわよ!!

 あんたをいつまでもブスにしといて平気なんだからさ!」


 香澄の言う事は分かるけど……
今は優しさとオブラートに包まれたいです……
 

 「あんまり、人の事、ブス、ブス、言わないでくれる?」

 私はデブでも、少しだけ性格ブスなだけよ!

 「いや、今の華はブスだよ!

 でも、私の知ってる、本来の華は欠点のおデブが隠れちゃうほど、正直で不器用な可愛い女なんだよ!

 だから、痩せて自信がついたら、もっといい女になる!

 この香澄さんが太鼓判押してあげる!

 たまには必死になってみな?
 死ぬほど努力してみろ!
 死ぬ気でダイエットして、そんでもダメなら、私が性転換手術でもして男にでもなってやるから!」


 芋焼酎って、タチ悪くなる飲み物なんですね……


 香澄の言葉ははちゃめちゃで、悔しくなって……

 『コノヤロウーそこまで言うか?』って怒ってみても、本気で私を心配する優しさで溢れていた。



 「性転換されても、香澄には惚れないと思う!」

 唯一の反撃! ヤッタネ!


「こっちだってイヤ……
 ーーこのスッポン女!!ーー

 でもさ、華、あんたが変われば周りも変わるよ!」

 「変えてやるわよ!!
このまんまじゃ、悔しいもん!!」



 変えてやろうと、本気モードで立ち上がった瞬間だった。


 香澄と顔を見合わせて笑い合う。

ーー悔し涙を笑いに変えた瞬間だったーー


 有難う香澄。


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