彼女は世界滅亡を描く。
いってきます、と先生が家を出てすぐマキくんが入れ替わるように私の元へ現れる。
「あれ、穂積さんもう行っちゃったの?!途中まで一緒に行くつもりだったのに!よし、俺たちも行くぞー!善は急げって言うでしょ!」
「急がば回れとも言うけど…。」
「あぁ!」
そうか、と口を抑えてケラケラとマキくんは笑うと、私の頭にニット帽を被せる。
「晴れるけど、寒いからあったかい格好していこう。」
「…行くなんて一言も……。」
「いや、今日は外に行こう!良いことがあるよ、きっとね。」
そのまま私に少し大きいコートと手袋を着せて、マキくんは私の手を引いた。行きたくないと思っているのに、マキくんが言うと本当に良いことがあるんじゃないか、という気持ちにさせられる。彼の熱意におされて私がしぶしぶ少し大きい靴を履くと、マキくんは満足げに微笑んだ。
「…行けばいいんでしょ…。」
「うん!行こう!」
マキくんに連れられるまま外へ出る。
先生の車はもうなくて、見送ることは出来なかった。マキくんはそんな私を横目にどこへ向かうのか足を進める。それに続いてまだ積もっている雪をザクザクと踏みならした私は頬を撫でる風に思わず身を縮める。
「さむっ…!」
「そりゃ外だもん。」
当たり前だとマキくんは笑って、こっちだよ、と山の方を指をさした。
真っ白な景色が永遠に続いていく。
私が再び一歩を踏み出すと、マキくんはにっとはにかんだ。
ザクザクと雪は音を立て、私の足はただ前を行くマキくんの後を追いかけていた。
「ねぇ、もう1時間近く歩いてるんじゃないの…?」
「まだ20分かそこらだよ。」
そうは言われても、知らない土地…しかも周りの景色が変わらないのでずっと長い時間を歩いているように感じる。
木々が生い茂っているここが森の中だということはわかるが、まさか今時森が残っているなんて思わなかった。
この街は、雪も、森も、私の知らなかったたくさんのものがある。
「ここ、いつからあるの?」
「さぁ。俺、昔のことはわかんないから。」
ちらりと私の方を一瞬振り返って肩をすくめたマキくんはすぐに視線を戻す。
道らしい道はない。
かろうじて人が最近通ったかのような跡を目印に、マキくんはどこかへ向かって歩いているようで、私はとにかく彼の背を追いかける。雪と元々の地形、木々の根が歩くことさえ容易にはさせてくれない。大きな木の根を乗り越えて、私はマキくんに話しかけた。
「ねぇ、私の知ってる地球の歴史じゃ、森は22世紀頃から一斉に伐採されてもうないはずなんだけど……。」
「ここはなくならないよ、しばらくはね。」
「…どうして?」
「特別な場所だから。」
「特別?」
「うん。まあ、単純に標高が高いのもあるけど…この森には大人の隠し事があるんだ。」
「はぁ?」
全くマキくんの言っている意味がわからない、と私が顔をしかめると、当の本人はうーん、とうまく説明する言葉を探した挙句に笑った。
「まぁ、行けばわかるよ。今日はウリワリさんが今疑問に思ったことに答えてくれる人もいるしね。」
相変わらずよくわからない返事。
どこへ連れて行かれるのだろう。本当に良いことなんてあるのだろうか。のうのうとついてきてしまったことを後悔し、私は思わず足を止める。私が立ち止まると、マキくんは足音が無くなったのがわかったのか振り返って笑った。
「後もうちょっとだから、頑張って。」
私の手をとってマキくんが足を再び進める。
「…立ち止まれないじゃない。」
私の独り言は聞こえなかったふりだ。私は結局彼が立ち止まるまで歩かされることになった。
「あれ、穂積さんもう行っちゃったの?!途中まで一緒に行くつもりだったのに!よし、俺たちも行くぞー!善は急げって言うでしょ!」
「急がば回れとも言うけど…。」
「あぁ!」
そうか、と口を抑えてケラケラとマキくんは笑うと、私の頭にニット帽を被せる。
「晴れるけど、寒いからあったかい格好していこう。」
「…行くなんて一言も……。」
「いや、今日は外に行こう!良いことがあるよ、きっとね。」
そのまま私に少し大きいコートと手袋を着せて、マキくんは私の手を引いた。行きたくないと思っているのに、マキくんが言うと本当に良いことがあるんじゃないか、という気持ちにさせられる。彼の熱意におされて私がしぶしぶ少し大きい靴を履くと、マキくんは満足げに微笑んだ。
「…行けばいいんでしょ…。」
「うん!行こう!」
マキくんに連れられるまま外へ出る。
先生の車はもうなくて、見送ることは出来なかった。マキくんはそんな私を横目にどこへ向かうのか足を進める。それに続いてまだ積もっている雪をザクザクと踏みならした私は頬を撫でる風に思わず身を縮める。
「さむっ…!」
「そりゃ外だもん。」
当たり前だとマキくんは笑って、こっちだよ、と山の方を指をさした。
真っ白な景色が永遠に続いていく。
私が再び一歩を踏み出すと、マキくんはにっとはにかんだ。
ザクザクと雪は音を立て、私の足はただ前を行くマキくんの後を追いかけていた。
「ねぇ、もう1時間近く歩いてるんじゃないの…?」
「まだ20分かそこらだよ。」
そうは言われても、知らない土地…しかも周りの景色が変わらないのでずっと長い時間を歩いているように感じる。
木々が生い茂っているここが森の中だということはわかるが、まさか今時森が残っているなんて思わなかった。
この街は、雪も、森も、私の知らなかったたくさんのものがある。
「ここ、いつからあるの?」
「さぁ。俺、昔のことはわかんないから。」
ちらりと私の方を一瞬振り返って肩をすくめたマキくんはすぐに視線を戻す。
道らしい道はない。
かろうじて人が最近通ったかのような跡を目印に、マキくんはどこかへ向かって歩いているようで、私はとにかく彼の背を追いかける。雪と元々の地形、木々の根が歩くことさえ容易にはさせてくれない。大きな木の根を乗り越えて、私はマキくんに話しかけた。
「ねぇ、私の知ってる地球の歴史じゃ、森は22世紀頃から一斉に伐採されてもうないはずなんだけど……。」
「ここはなくならないよ、しばらくはね。」
「…どうして?」
「特別な場所だから。」
「特別?」
「うん。まあ、単純に標高が高いのもあるけど…この森には大人の隠し事があるんだ。」
「はぁ?」
全くマキくんの言っている意味がわからない、と私が顔をしかめると、当の本人はうーん、とうまく説明する言葉を探した挙句に笑った。
「まぁ、行けばわかるよ。今日はウリワリさんが今疑問に思ったことに答えてくれる人もいるしね。」
相変わらずよくわからない返事。
どこへ連れて行かれるのだろう。本当に良いことなんてあるのだろうか。のうのうとついてきてしまったことを後悔し、私は思わず足を止める。私が立ち止まると、マキくんは足音が無くなったのがわかったのか振り返って笑った。
「後もうちょっとだから、頑張って。」
私の手をとってマキくんが足を再び進める。
「…立ち止まれないじゃない。」
私の独り言は聞こえなかったふりだ。私は結局彼が立ち止まるまで歩かされることになった。