彼女は世界滅亡を描く。
案内された部屋は、金がかかっているということが一目でわかるような、そんな部屋だった。
無駄に装飾のついた天井のランプ、高級感漂う赤に包まれたソファ、ガラスのローテーブルに、棚に置かれた数々の工芸品や花。
「ここは応接室です。」
キョロキョロと辺りを見回す私に男が声をかける。
「何か興味のあるものが?」
「あ、いえ……!どれも高そうだな、と…。」
「そうですね。確かにここにあるものは貴重な地球の歴史的資料ですから、高値がつくものもあります。」
例えばこれは、と壁にかかった絵を指差す男は絵の歴史だとか描画方法だとかを詳しく話し始める。マキくんが私に、話が長いんだ、と耳打ちをしたので私は曖昧に笑みを浮かべた。誰かが止めなければ永遠に続きそうな男の解説を私がやんわりと遮る。
「それで…ここについて、なんですけど。」
「あぁ、そうでした。我々はこの長い時をお待ちしておりました、ウリワリ様。」
「はぁ…。」
男はぺこりと一礼して私たちに座るようソファを指差す。
「私は、第4惑星星治省星外局第3惑星特捜部星外探査専門研究員のカミュニカ。こちらでは第五通信基地局局員をしています。ここの皆は私をカミュと呼びますので、ウリワリ様もそのように…。」
「ちょっと待って下さい!」
突然異国語を話されたのかと思った。私は思わずカミュと名乗ったその男の話を遮る。マキくんはすでに経験済みなのだろう、ケラケラと笑ってだから毎回やめたほうがいいって言ってるのに、と男を指差した。
「これは失礼しました。どうしても癖が抜けなくて困りますね。」
「ほんとお役人って感じ!」
「基地局局員とはどのような感じなのでしょうか?」
「んー、もっとフランクな感じかなー。どう思う?ウリワリさん。」
「はぁ?!」
訳のわからない私を置いてけぼりにして会話を進めていたかと思うと、突然こうして私に話をふるのだから、本当にマキくんという人がわからない。
「…まず、整理させてください。」
「ええ、どうぞ。」
「カミュさんの、その、役職…ええっと、なんとか研究員っていう…。」
「はい、第4惑星星治省星外局第3惑星特捜部星外探査専門研究員です。」
「そう、それです。それは一体何なんですか?」
「それ、とは…?第4惑星星治省星外局第3惑星特捜部星外探査専門研究員は、第4惑星星治省星外局第3惑星特捜部星外探査専門研究員ですが…。それ以上でも以下でもありません。上からは特にこれに変わるものもないと聞いております。」
「そういうことじゃなくて…!」
私と男のやりとりにマキくんが笑って私の言いたかったことを口にする。
「ウリワリさんはどういうことをするのかを聞いてるんだと思うよ、カミュ。」
「どういうこと、というと、仕事内容でしょうか。」
「簡単に、手短に、ね!」
念を押すようにマキくんが言うと、承知しました、と男は頷いて少し考えた後に口を開く。
「火星から地球に定期的に降り立ち、地球について研究を行ったり、現在の地球または研究結果を火星へ報告したりするようなことをしています。」
「…なるほど。」
火星から地球のことを調べて通信する人ね……。

「って、え?!火星ですか?!」
私の反芻した言葉が応接室に木霊した。
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