これを『運命の恋』と呼ばないで!
「……なぁに?ナッちゃん」


パソコン画面を見ていた目がこっちを向いた。
ドキッとするような強い目ヂカラに、ビクリと肩が震える。


「いえ、何でもありません」


この人は優しいけれど隙がない。
青空先輩みたいに早とちりもしないし、周りのこともよく見てる。

冷静沈着って言葉がピッタリしそうなタイプ。
こういう人が、企業のトップレディになるんだと思う。

そして、そういう人こそが青空奏汰の求めてる女性。
私とは雲泥の差がある。


(私の願いはこれからも叶う望みもなく終わりを迎えるんだろうな……)


片思いですら届かないうちに終わる人生か。
考えるだけで虚しい。



(クレハさんに会わなければ良かった……)


手首に通されてる守護輪の効力は一体いつまで持つんだろう。
最初に入れてくれた『気』というのは、まだ残ってるんだろうか。


守護輪の『気』が残ってるなら、一つだけ願いを叶えて欲しい。


もう一度、青空先輩と二人だけで食事がしたい。
楽しくて忘れられない時間を、共に過ごしてから死を迎えたい。



(結婚なんてどうでもいいや)


どちらが先に来たとしても、今が良くなければ意味がない。



(……どうか、叶って!)



クレハさんの守護輪に祈った。

そして恋は、いきなりの急展開を迎えたーーーー




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