これを『運命の恋』と呼ばないで!
「ちょっと来い」
短く声をかけると、さっさと課内を出て行く。
その背中を追いかけながら、ボロボロと涙が溢れだした。
ぐす、ぐす…と泣きながら付いてくる私を振り返り、困ったように息を吐く。
休憩スペースの自販機のところまで来ると、クルリと後ろを振り向いた。
「いい加減泣き止め」
ほらっと手渡されるハンドタオル。
先輩にそれを借りるのは三度目。
その都度、色が違う。
ぎゅっと握りしめて借りた。
マスカラの黒がタオルに付いても、この際仕方のないくらいに押え付ける。
「……異動のこと、どうしてもっと早くに教えてくれなかったんですか……」
貴方は私の教育係兼指導者なんでしょ。
不出来な後輩を残して、知らん顔していくつもりだったの。
「言える訳ないだろう。内示は公表されるまで極秘だって決まってるし」
簡単に理由を説明して振り返る。
チャリチャリと小銭の音を立て、自販機のボタンを押した。
「ほら」
ニガテなブッラクコーヒーじゃなく、甘々なストロベリーラテを差し出される。
「泣いてる時には甘いもん。必須だろ」
「………」
甘過ぎる物もニガテだけど黙って受け取る。
先輩がくれるのは、いつも気紛れな優しさだけだ。
プルタブを押して飲み込んだ。
鼻水の塩気と混じったらしく、さほど甘くも感じない。
「旨いか?」
声の主を見上げる。
涙の粒が漂う視界に写ってる人が、心配そうな眼差しを向けている。
短く声をかけると、さっさと課内を出て行く。
その背中を追いかけながら、ボロボロと涙が溢れだした。
ぐす、ぐす…と泣きながら付いてくる私を振り返り、困ったように息を吐く。
休憩スペースの自販機のところまで来ると、クルリと後ろを振り向いた。
「いい加減泣き止め」
ほらっと手渡されるハンドタオル。
先輩にそれを借りるのは三度目。
その都度、色が違う。
ぎゅっと握りしめて借りた。
マスカラの黒がタオルに付いても、この際仕方のないくらいに押え付ける。
「……異動のこと、どうしてもっと早くに教えてくれなかったんですか……」
貴方は私の教育係兼指導者なんでしょ。
不出来な後輩を残して、知らん顔していくつもりだったの。
「言える訳ないだろう。内示は公表されるまで極秘だって決まってるし」
簡単に理由を説明して振り返る。
チャリチャリと小銭の音を立て、自販機のボタンを押した。
「ほら」
ニガテなブッラクコーヒーじゃなく、甘々なストロベリーラテを差し出される。
「泣いてる時には甘いもん。必須だろ」
「………」
甘過ぎる物もニガテだけど黙って受け取る。
先輩がくれるのは、いつも気紛れな優しさだけだ。
プルタブを押して飲み込んだ。
鼻水の塩気と混じったらしく、さほど甘くも感じない。
「旨いか?」
声の主を見上げる。
涙の粒が漂う視界に写ってる人が、心配そうな眼差しを向けている。