これを『運命の恋』と呼ばないで!
「そんなことある訳ないだろ。何言ってるんだ」


海外勤務を任されたのは上からのお達し。
やり甲斐のある仕事だと思うから引き受けただけだ……と話す。


理由を告げる青空先輩の顔なんて見れない。

今の私には、聞いてあげられるほど心の余裕すらない。


隣にいる人は遠くに行ってしまう。

私を残して置いていってしまうんだーーー。



ボロボロ…と大粒の涙が溢れて止まらなくなった。

こんな風に泣いたら気持ちがバレてしまうかもしれないのに止めれない。


こんな別れを望んでなどいなかった。

これが運命なら私は二度と恋なんてしたくない。


こんなの運命だなんて思いたくない。


これを『運命の恋』と呼ばないで欲しいーーー!




「…先輩はズルいです」


泣きじゃくりながら声を漏らした。
ムッとした表情を浮かべ、青空先輩が聞き返す。


「俺のどこがズルいんだよ」


「……全部」


私の気持ちも知らずに海外へ行くことを決めた。

ニガテだと思ってるのに、汐見先輩に私のことを任せようとしてる。


無責任な優しさを感じさせて、心の中に恋を残した。

なのに、それを摘み取ろうともせず、自分のやりたい事をやろうとしている。


「先輩みたいな人キライです。自分勝手でテキトーで無責任で……」


全部自分の想いが言えないからの逆恨み。
先輩が悪い訳でも何でもない。

けれど……


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