これを『運命の恋』と呼ばないで!
「何処へでも行っちゃえ!青空先輩の顔が見れなくなるなら清々する!」


言い捨ててダッシュして逃げた。
後ろから先輩の呼ぶ声がしたけど無視した。


バタバタとトイレに走り込み、個室の中に立て籠もった。
便器の蓋の上に座り込み、グスグスと泣き続ける。

酷い顔になるのは承知の上。
元々美人でもなければ可愛くもないから平気。



(ごめんなさい……青空先輩……)



言いたい放題を言ってしまった。

言葉を挟むこともなく、先輩は私の逆恨みを受け止めた。

今頃、何だと言って怒ってることだろう。

これから仕事もあるというのに、どんな顔して席に戻ればいいんだ。



(ホントにどうすればいいの……)


さっきの大声を課内の人にも聞かれた。

皆は何があったのだろうと噂し合ってるかもしれない。

問われたらどう答えればいい。

自分から仕事しにくい環境を作り出して、働きにくくしてどうする。

ただでさえ仕事のできない人間なのに、これ以上捗らなくしてどうするんだ。



(バカな私……)


「バカ山」と言われても当然な人間。

本当にどうしようもない。




泣くだけ泣いてメイクを落とした。

腫れぼったくなった瞼の上にシャドウを乗せるのもおかしいカンジがする。


(もういい。スッピンで仕事しよ……)


どうせメイクしても変わらない。
いずれにしても無能な人間なんだから。


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