これを『運命の恋』と呼ばないで!
トボトボと歩いて課に戻った。

肩を落として背中を丸めて席に座り込む。

幸いなことに誰も何も聞いてこない。

無能な私が声を上げたところで、気にする人もいないみたいだ。



(良かった……)


ホッとしつつチラリと前の席を確認した。
青空先輩の姿はなく、ほんの少しだけ安心する。



「空君なら部長に呼ばれて行ったわよ」


右隣の人がわざわざ教えてくれる。
振り返った私の表情を見て、フ…ッと寂しそうな笑みを見せた。


「いきなり聞かされたら驚くわよね」


汐見先輩はそう言って黙り込んだ。
自分自身もかなりのショックを受けてるみたいだ。


「私も最初聞いた時は驚いたの。だから、思わず問い質してしまって」


私が貧血を起こして倒れた時の会話がそうだと教えてくれた。


「総務部長に空君の後釜を頼むと言われてビックリしちゃって聞いたの。いつまで行くのかって。急に頼まれても困るでしょうって」


自分に後釜なんて務まらないと反論したかったんだそうだ。



「……もしかして、あの時の言葉……」


『私は空君の……』発言の真意は、それだったんだと気づいた。

汐見先輩は私を見つめ、少し怒った様な口調で言った。


「可愛がってるナッちゃんを置いて海外支社へ行くなんて信じられない!空君ってば一体何を考えてるんだか」

「えっ!?私、可愛がられてなんていません!」


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