これを『運命の恋』と呼ばないで!
いつもいつもバカにされたり貶されたりイヤミばかりを言われてただけ。

そして、それを補うかのように気紛れな優しさを示されただけ。


「可愛がられてるわよぉ。いっつもナッちゃんのこと向かい側から心配して見てたし」


面白いくらいに正直なんだから分かると言われた。
さっぱり意味が掴めず、キョトンとしてしまった。


「私に聞かされるよりも本人に尋ねてみたら?『私のことをどう思ってるんですか?』って」

「えっ…でも、汐見先輩は彼女なんでしょう?」


そんなの聞いてもいいの?と思う。
それほど自信があるってこと?


「私が彼女?誰の?」

「も、モチロン青空先輩の」


あれ?違う?
でも、仲はスゴくいいよね?


「プッ!まさか。なんで私が?」


クスクスと苦しそうに笑いを噛み締める。
こっちは頭が混乱してきて余計に意味が通じない。


「残念ながら私は彼女でもなければ何でもないわ。ただの同期生だし恋愛感情もない完全なお友達。それ以上のものなんて、袖を振っても出ないわよ」


内緒だけど部長と付き合ってるの…と教えてくれた。

ビックリして言葉にならず、目を剥いてしまった。


「私がいち早く空君のことを知った理由が分かったでしょう?だからこそ問い質したの。『ナッちゃんを置いていくの?』って意味で」



ーー置いていく。

その言葉はさっき自分が思ったものとおんなじ。

置いていかれると思ったからこそ、悔しさや悲しさが反動で込み上げてきた。


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