これを『運命の恋』と呼ばないで!
(変われる?私……)



変えようとしたら努力は報われる?

近づいてくる死期も、少しは遠くなる?

青空先輩が振り向いてくれる?

振り向かなくてもいいから何処へも行かないで欲しいーー



アスファルトを見ながら歩いていた。
声が掛からなければ、店の前を通り過ぎていたと思う。



「ナッちゃん!」


ビクついて顔を上げると、ホッとしたような眼差しと出会った。



「京塚先輩……」


ぎゅっと胸が苦しくなる。

やっぱり会いに来るべきじゃなかった。
すぐにでも謝って立ち去ろう。


「あの……」

「待ってたよ。さぁ入って」


強引なくらいに背中を押される。


「待って、私……」


何処かしらあの夢と似ている。
怖くなってオドオドと身構えた。



店の中に入ると店休日らしく、従業員さん達の姿も見えない。


「あの…先輩……?」


まさかとは思うけど二人きり?
薄暗い店の中で一体何をするって言うの?



「こっちへ来て」


すっ…と手を取られる。
ますますあの夢に近づいていく。

厨房の奥に連れて行かれ、そこにあったアルミのドアを開けた。


ドアの向こうには畳の敷かれた和室があった。
休憩室らしく、座布団が置かれてある。


「お待たせ。連れてきたよ」


中にいる人達に向かって声をかけると、先輩はどうぞ…と促した。

ゴクン…と唾を呑んで、一歩前に出ると……


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