これを『運命の恋』と呼ばないで!
一組の男女がキョトンとした表情でこっちを見ていた。

女性はパチッと瞬きをして、男性は無表情に近い顔つきで睨んでる。

目元は何となく先輩に似ている男性と口元はそっくりな女性。


まさか…とは思うけど、先輩のご両親?
もしも、そうだとして、何故この場に私が呼ばれたの?



「父さん、母さん、僕の付き合ってる人です」


(えっ!?)


先輩の言葉にギョッとした。


(どういうこと!?私は先輩とは付き合ってないよ!?)


「名前は若山夏生さんと言います。ナッちゃん、僕の両親です」


さらりと何でもないことのように紹介された。
目が点になり、辛うじて頭だけ下げた。


「は、初めまして……若山です……」


お辞儀をしながら目眩を感じる。
これではまるで、私が先輩の彼女みたいじゃないか。



「あの……」


否定しておかないと。
このままでは嘘をつくことになる。


「私……」
「大学の2年後輩なんだ」


タイミングが早過ぎる。
私の目の前に立ちはだかり、先輩は間髪入れず話し始めた。


「在学中、僕達ずっと付き合ってたんだ」


ねっ…と視線を送られる。
振り向いた先輩の顔が神妙過ぎて、思わず答えに詰まった。


「そうです」とも言えず俯いた。
その私に向かって、先輩のお母さんが問いかける。


「本当なの?」


嘘ではない。
だから、コクン…と頷いた。


< 118 / 218 >

この作品をシェア

pagetop