これを『運命の恋』と呼ばないで!
「どうか死が回避されて幸せな結婚へと導かれますように」


手首に輪を通しながら祈られた。
不思議な透明感を放つ女性は、その後、私の両肩をさっと手で払い除けた。


「憑いてた邪気を祓い落としました。明日から暫く安泰で暮らせると思います」



その言葉通り、次の日から2、3日は先輩からのお叱りも受けずに過ごすことができた。
いつも以上に神妙な顔つきで仕事に取り組んでたせいか、ミスすることも少なかった。

けれど、不思議なほど穏やかに過ごせた数日の間も、「死期が近づいてる」と言われたのが気になってーー。



本当に死んでしまうのかしら?

それを回避してくれる強い味方っているの?

誰なの、それは。

本当に出会える?

それとも、もう出会ってるの?



悩みは尽きなくて深まっていくばかりだった。


冷や汗をかきながら毎日を送っていたある日、穏やかな日常は一変し始めた。




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