これを『運命の恋』と呼ばないで!
私は社会人になって仕事していくうちに、先輩のことは考えなくなった。

毎日毎日、不慣れな仕事に慣れることに精一杯で、特に青空先輩に会ってからは彼に慣れるのが精一杯で。

不快な思いをしながらも優しいところに気づかされて戸惑った。

先輩が好きだと分かってからは、そんな優しさに触れられるだけでいいと願った。


その矢先に異動の辞令。


好きな人はまたしても遠くへ行こうとしている。

なのに別れた彼からは好きだと言われ、どうすればいいのか迷う。



押し黙ってると言葉を告げられた。

京塚先輩は、私が今一番欲しいと望んでる言葉を言ってくれた。


「ナッちゃんを困らせるつもりはない。ただ、好きな人がいないようならもう一度僕のことを見て欲しい。

結婚も視野に入れて付き合っていきたい。今度こそ、君を幸せにしたいんだ」


胸を躍らされるような言葉を言われ、ビクッと身構える。
怯えるような気持ちでいる私を眺め、先輩は真面目そうな表情で囁いた。


「君と再会したのは運命だと思う。これが運命でなかったら、僕等は出会わなかっただろう」


「運命……」


またしても運命が顔を覗かす。
望んでもいないのに、どうして邪魔ばかりするんだ。


「先輩……」


ぐっと手を握りしめる。

大学の2年間、ホントに好きで堪らなかった人。

体裁が悪くてイヤだったかもしれないけれど、それならそれで、卒業する前に本当のことを言って欲しかった。


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