これを『運命の恋』と呼ばないで!
漬物屋さんを継ぐんだと教えて欲しかった。
何もかもを内緒にして行かないで、真実を伝えて欲しかった。

捨てられたんだと勘違いした私の大学2年間は、悲しい思い出しか残ってない。

だから、社会へ出て変わりたいと願った。

今の会社で、かっこいいOLとして生きようと思った。

現実はダメ出しばかりでどうしようもない足手まとい社員だけど、それでも自分としては精一杯やってるつもりで、手抜きなんかしないで一生懸命やってるつもりで……


なのに、好きな人はまた遠くへ行く。

私は今度も置いていかれようとしてる……


ゴチャゴチャと考えてたら思考が収まりきれなくなった。

中途半端なままで黙り込む私に、京塚先輩の顔が近づいた。



「ナッちゃん」


ファーストキスの相手が手を握る。
ドキン…と胸の内が震えて、ぎゅっと力が入った。



「やだ……」


やめて。

近寄らないで。


今日会ったのは間違いだった。

昨日は気が動転し過ぎて、誰でもいいから頼りたいと思ったけど……



「ごめんなさい……私…好きな人がいるんです……」


その人しか見えてないの、今は。

その人と一緒にいることが今の私の願いなんです。

もう直ぐ遠くへ行ってしまうけれど、それまではなるべく近くにいたい。

細やかだけど触れ合いが欲しい。

それがイヤミの一つでも、やっぱり先輩から言ってもらいたい。

< 124 / 218 >

この作品をシェア

pagetop