これを『運命の恋』と呼ばないで!
「あの時の彼の顔、本気だったよ」


呟きながら、寂しそうな目をする。


「俺の彼女が何かしましたかって言ってた時、真剣そのものだった。絶対に触れさせるもんかって思いに溢れてて殺気すら感じさせた。

だから今日も、本当はこんな風にナッちゃんを使っていいのかどうか迷った」


謝るのは僕の方だと項垂れた。
その頭頂部を見つめながら、私に謝った青空先輩のことを思った。


「ごめん。こんな嘘に巻き込んで悪かった。もう二度とこんなことで君を利用したりしない。

両親に嘘まで吐かせた責任は僕が取る。だから、ナッちゃんは彼と幸せになって」


幸せになって…と言われても無理だ。
私はもう直ぐ死ぬかもしれない。

誰の手も届かない所へ逝ってしまう。


たった一人で………





「無理なんです、先輩……」


クレハさんの占い通りなら、私には死期が迫ってる。
婚期も近づいてるのかもしれないけれど、それを望む人は遠くへ行こうとしてる。


絶対に一緒になれない運命。
それだけは決定的なんだ。



「無理って、どうして?」


優しい人は聞き出そうとしてくれる。
でも、もう頼ってはいけない。


「何でもないんです……それより私、もう帰りますね。先輩の仕事が上手くいくこと、心から願ってます。

再会できて嬉しかったし、優しいところが変わってなくてホントにホッとさせられました」


ありがとう、京塚先輩。

私の初めてを知る人………


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