これを『運命の恋』と呼ばないで!
「食べに行かないんですか?」


気まずいけど声をかけた。
パソコンの前に座ってる人は、反応するようにこっちを向いた。


「あ?」


顔を上げた先輩の目がヤバい。
ショボショボしてる。いつもより小さく見える。


「先輩、休んだ方がいいですよ」


お節介も甚だしいけど勧めた。


「休んでる暇なんてないんだよ」


そう言いながらキーボードを叩いてる。
話しながら打てるなんて神業もいいところだ。


「でも、目が死んでます」


実際はそこまでじゃないけどアドバイスした。
面倒くさそうな顔をした鬼は、手を止めて私の方を眺めた。


「お前、俺の顔なんて見たくないんじゃなかったか」


一昨日のことを根に持ってるんだと知った。
傷つくこともあるんだと思うと、少しだけ可愛い気もする。


「顔を見れなくなって清々すると言ったのは謝ります。急なお話だったので、かなり動揺してました」


会えなくなると思うからこそ急激に寂しくなった。
でも、よく考えたら私が先に逝く可能性だってある。

どちらが先に…が問題じゃない。
今ある幸せを大切にして生きることが大事なんだ。


「先輩が忙しくてお昼食べれないなら何か買ってきましょうか?」


思いは届かなくてもいいや。
先輩と触れ合える、この機会を逃したくない。


「いや、いい。そんなに言うなら食いに行く」


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