これを『運命の恋』と呼ばないで!
カチャカチャとキーボードを叩いて電源を落とした。
先輩が言うことを聞くなんて初めてだ、雨でも降るんじゃないだろうか。


何気なく外を見てしまった。
それに気づいたのか、先輩に問われた。


「何してんだ?」


一緒になって外を眺める。


「雨でも降るんじゃないかと確かめてます」


……とは言えないので。


「いえ、今日は暑いなぁと思って」


デスクの中に椅子を納めながら答える。
外へ行こうと思ってる私とは違って、先輩はきっと社食へ行くんだろう。



「何を食いに行く?」


不意に聞かれ戸惑った。
今の言葉、どう考えても私に言ってるんだと思うけど……


「あの漬物屋か?」


当然のように聞いてくる。
それがスゴく不思議で仕方なくて………



「一緒に食べるんですか?」


つい確認してしまった。


「当たり前だろ。お前が俺を誘ったのに」


(いえ、私は誘った覚えなどありません)


……とは、口が裂けても言えないので。


「じゃ…じゃあざるうどん食べに行きませんか?あそこの漬物もスゴく美味しんですよ!」



……ああ、神様。
細やかな贈り物をありがとう。

この喜びは忘れません。
天国に行けたら、肩揉みでも何でもしますから!



「豚の冷しゃぶも乗ってて最高なんですよね!」


ウキウキしながら話す私に微笑みかけてる。

今日の先輩は何だかいつもと様子が違う。

私が『今を大事にしよう』と、思い始めたから?

だから、こんなハッピーなことが起こるの?


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