これを『運命の恋』と呼ばないで!
「若山は子供っぽいな」


呆れながら放つ言葉に耳を疑った。


「でも、可愛いからそれでいい」


「へっ…?」


今の何!?

可愛いとか聞こえたけどウソ!?

青空先輩が「可愛い」って言った!?

それ、私に言ったの!?



「ほら早く来いよ。席埋まるぞ」


さっさと背中を向けて出て行く。


「ま…待って下さい!」


慌てて追いかける。

今のがウソでも何でもいい。
先輩と一緒にご飯が食べれる。
その願いが叶った!



(ありがとう。クレハさん!)


守護輪に軽くキスする。
これでもう思い残すことなんてない。

死んでもいい理由がもう一つできた。それだけで十分!





オフィスを出ると、熱いくらいに紫外線が降り注いだ。


「眩しっ…」


思わず軽い目眩を感じる。
一歩進んだ足元がフラつき、直ぐに背中を支えられた。


「しっかり歩けよ」


危ねぇな…と手離す。


「先輩!」


ぎゅっと手を握ってしまった。

その手を見つめ返し、先輩の目が私を捉える。


タラッと冷や汗を感じる。
けれど先輩は、何も言わずに手を握り返してきた。



「行くぞ」


引っ張るように歩きだす。
その背中を見越しながら足元がやけに辿々しく感じる。


どういうつもりなのかは知らない。
ただ、どうか離さないで欲しいと願う。



(お願い。何処にも行かないで……)


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