これを『運命の恋』と呼ばないで!
「追いかけるなんてムリ。私、智花と違って英語なんて話せないし」


好きって気持ちだけで海外へ行けるほど勇気もない。
連れて行きたいとは言われたけれど、実際一緒に行こうとは言われなかった。


「先輩も私の仕事ぶりを見てきてるから一緒に来てくれなんて言わないよ。日も迫ってるし、絶対にムリだよ」

「いつ出発するの!?」

「来月初め。だから後3週間あまり」

「うーん、そりゃ焦るわ」

「でしょ?」


焦ったところで事が進む訳でもない。
どんなに思いが通じてもやっぱり別れる運命なんだ。


「私、もう先のことは考えない様にするって決めたの。死期も婚期も近づいてるって言われたけど、振り回されないようにしようって。だから、先輩とのことも今だけを大切にする。いい思い出だけを持って見送ろうと思う」


「それでいいの!?そんな恋なんて切ないだけよ!?」


智花の声が必死に聞こえる。
でも、それ以上の何ができるだろう。


「いいの。笑って先輩を見遅れたらそれで」


願いは全て叶えてもらった。
これ以上のことを望めばキリがない。


「ナツ……」


智花の声が沈む。
クレハさんに私を会わせたことをきっと後悔してる筈だ。


「心配しなくてもいいよ。これでも私、今スゴくハッピーな気分なの。だって残業したら先輩との時間がそれだけ増えるし」

「えっ!?どういう意味!?」


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