これを『運命の恋』と呼ばないで!
「若山もさっさとやってしまえよ」


パソコンに向かってた人から声がかかる。
ドキッとするのを押し隠しながら焦って言葉を返した。


「は…はい」


声なんてかけられたら余計に間違う。
間違わないように指一本でキーボードを叩いてたら、どうも見られてたみたいで。


「お前何やってんだ?そんなのじゃいつまでも終わらねぇだろ!?」


鬼が叫んだ。
その声を聞いて、何だかホッとする。


「すみません。なるべく早く終えます」


優しくされると困惑するけど、厳しくされると安心するなんて変だ。


(おかしい、私……)


心の中で笑ってしまう。
一緒の時間を過ごす為に、その後は必死で頑張った。




「あーやれやれ、今日もなつみに酷使された」


オフィスを出ると「若山」から「なつみ」に切り替えられる。
私はいつでも「青空先輩」としか呼べないのに。



「毎度すみません」


無能なりに精一杯やってるつもり。でも、急には何事も改善なんてしない。


「まぁいいよ。お前は遅くなるからって手は抜かねぇし、最後まできちんとやり遂げるから」


怒っても見てるとこは見てたんだと知った。
呆気にとられてたら、スッと腰を巻き取られた。


「飯食いに行こう。何が食いたい?」

「え、あの……れ、冷麺とかどうですか?」

「冷麺!?色気ねぇなぁ」

「そ、そうですか?じゃあ何にしよう……」


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