これを『運命の恋』と呼ばないで!
必要以上に体が密着してるせいか、あれこれと思い浮かんでこない。


「俺としては牛丼がいいんだけどな」


早いし旨いし…って、そっちの方が色気ないでしょう。


「いいですよ。お肉は好きだし漬物も食べれるし」

「お前の奢りな」

「えっ!?は、はい」


デートって男性がお金出すんじゃないの?それともこれはデートでもなく単なる夕食?


「代わりにその後の金は全部出す。ホテル代とかルームサービス代とか」


「せ、先輩…!」


焦ること言わないでぇ。
お肉が喉に引っ掛かる。


「お前の反応は見てて一々面白いな」


揶揄って笑うし。


「もうっ、だから先輩は鬼みたいだって思うんですよ」


オフィスでは厳しいし、外では私の反応を見て楽しんでる。


「なつみが可愛くて仕方ないんだから勘弁しろよ。お前といるとホッとするんだ」

「ホッとする?」

「ああ。肩の力が抜ける。頑張り過ぎなくてもいいんだって思う」

「私はいつでも一生懸命ですけど!?」


失礼だなぁ。私がバカみたいに聞こえるじゃない。


「そんなの知ってる。自分に素直ななつみを見てると気持ちが和むって意味だ。ほら入るぞ」


牛丼屋の扉を開けられた。
口は悪いけど、先輩は何かとフェミニストだ。


「ありがとうございます」


扉をすり抜けて中へと入り、前と同じ様にカウンターに並んで座った。



「並か?」


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