これを『運命の恋』と呼ばないで!
顔が振り向く。


「はい」


それ以上はムリ。


「じゃあ並と特盛りで」

「へーい。並と特ですねー」


店員の後ろ姿を見送って前にある冷蔵ケースを眺める。


「お前、お新香食うんだろ?サラダは?」

「食べます。ゴボウの方」

「ゴボウね……ほらよ」


とん、とん…とテーブルに置いてくれる。


「頂きまーす!」


シャリシャリと漬物から齧る。



「美味しい!やっぱ漬物は最高!」

「お前ホント草食系だな」


嬉しそうな顔してる。
届いた牛丼を見やって、私の方に振り向いた。


「肉いるか?」

「モチロン!」


遠慮もしないで答えると、摘んだ量だけ乗せてくれた。


「こんなに沢山貰っていいの!?先輩ありがとう!」


色気とかない方が私達らしい気がしてくる。
先輩はあっという間に丼を平らげてしまい、私が食べてる様子を見入ってた。



「あの……そんなに見てられると食べにくいんですけど……」


お茶くらい啜っておいて欲しい。


「すまん。つい癖で」


照れくさそうな顔してそっぽ向く。


そう言えば、今日知った。
先輩はいつもさり気なく私の方を見てたんだ…と。


「あの……」


聞いてみようか。
いつからあんな風に私のことを見てたのか。


「ん?」


湯呑みを口を付けた格好で振り向く。
トクン…と胸が鳴るのを聞いて、それとなく尋ねた。


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