これを『運命の恋』と呼ばないで!
「先輩は癖になる程私のことをオフィスで見てたんですか?」


飲み込もうとしてたお茶が引っ掛かったらしく、先輩は激しくむせ込んだ。


「ゲホッ!ゴホッ!」

「だ、大丈夫ですか!?」


箸を置いて背中をさする。
ゴホゴホ…と咳をしてた先輩は、キッと目尻を上げて怒った。


「ば…バカなこと聞くな!」

「す、すみません!」


肩を上げて謝る。
やれやれ…と息を吐く先輩にショボくれながら箸を取り直した。


「お前のこと、総務に来た時から毎日見てたよ」


ボソッと言われた言葉に振り向いた。
ポカンとしてると、鼻の頭を摘まれた。


「イタッ!」

「早く食えよ。続きは後から教えてやる」

「ふ…ふぁい」


鼻を離されて残りを食べ始める。
確かに胃袋に入ってる筈なのに、お腹よりも胸がイッパイになっていく気がした。






外へ出ると先輩は私の肩を抱いた。


「あ……あの……」

「逃がさないぞ。今夜は俺のものにするんだからな」


ドギマギする様なことを顔色も変えずに言うと、そのままの格好で歩き出した。



「さっきお前が言ってたことの続きな。俺が癖になる程お前を見てた理由だけど……」

「は、はい、何ですか!?」


顔を見上げる。
目の合った先輩の視線は一度だけこっちに向いて直ぐに前に向き直った。



「お前が異動してくる前に営業部長に声をかけられたんだ」



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