これを『運命の恋』と呼ばないで!
向かっ腹立ったから黙って残務整理をし始めた。
その私を睨むように青空先輩は見据えている。



「バカ山」

「若山です」


嫌な呼び方をされたくなくて言い返した。


「バツみ」

「なつみです!」


「どっちでもいい。仕事ができないのに変わりはない」


うっ、確かにそうだ。


観念して手を止めた。
デスクの向かい側に座っている人は、小さな息を吐いている。


「お前、どうしてそんなに仕事ができないんだ」

「知りません」

「まさか、バカなのか?」

「あんまりでしょ、そのセリフ」

「しかし、此処に配属移動されて1年以上になるんだぞ!?普通ならもそろそろ仕事が出来るようになってもおかしくない筈なのに、お前はまるで成長が感じられん」


(そりゃあんたが怖すぎて、いつもビクビクしながら仕事してるからでしょ!)

とは言えないのでーー


「数字とか計算がニガテだからですかね」


……とでも言っておく。


「学習障害でもあるのか?」

「そんなものあると言われたことはありません」

「だったら何故……」

「先輩、そんな愚問繰り広げてるだけ時間の無駄です」


シャットダウンしよう。
聞いてると虚しくなってくる。


「そんなのお前に言われなくても分かってる!」


(だったらさっさと仕事を手伝ってよ!その為にあんたも残業してるんでしょうが!)


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