これを『運命の恋』と呼ばないで!
(いいなぁ…先輩は)


未来が約束されるというのは羨ましい。
私の未来は不透明で、しかもあんまり明るくもない。


(青空先輩は私とどんな未来を描いてるんだろう)



体だけ繋がったらおしまい?
転勤して海外へ行ったら連絡もくれないつもり?



(それでもいいと昨夜は思ったけど……)



ホントはそんなの望んでもいない。
実際に叶えたい未来は、先輩と一緒にいることだ。



「連れて行って下さい』

……そんな言葉、口が裂けても言えやしない。
オフィスでも足手まといなのに、住んだこともない土地へ行って迷惑なんてかけれない。


ニッコリと笑って見送るだけ。
その旅立ちの日まで体を重ねるだけ。




「若山」


声をかけられて前を見る。
『手を動かせ』とジャスチャーをする先輩の顔を思わずジッと見入ってしまった。



(救世主なのに離れてくんですね……)


声にならない呟きを思い浮かべて目を伏せる。
その後は仕事の質問をする以外、前を向かないようにした。





「お先に失礼します」


昨夜と違って今日は残業も少なくて済んだ。
汐見先輩は隣からいろいろとアドバイスをくれて、聞きたいことは青空先輩に教わった。


「お疲れ様、ナッちゃん」

「気をつけて帰れよ」


先輩達は引き継ぎの仕事があるらしく、今日は二人で居残り。


「はい。注意して帰ります」


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