これを『運命の恋』と呼ばないで!
さっさと逃げ去ろう。
一緒にいない方がいい。


「じゃ、また」


横を擦り抜けようとした。




けど………





「ナッちゃん!」


ぐっと掴まれた手首にビクついた。
離して欲しい時ばかり、この人は優しい。


「何かあったんだろう?言ってみなよ」


ぎゅっと手に力がこもり、先輩の思いやりが苦しくなる。



「何もないです。平気だからほっといて」


無理矢理腕を振り解いて走りだす。

前なんて見ずに走っていたから交差点に差し掛かってるのにも気づいてなかった。




「危ないっ!!」


叫びに似た声に驚いて前を見た。



「なつみ!」


ぎゅっと背中から腕が伸びてくる。


「きゃっ」


パパーッ!!

驚きと同時にクラクションが鳴り響き、目の前をトラックが走り抜けていった。



「バカッ!気をつけろって言ったろ!」


後頭部から声がする。
走ってきたみたいで、スゴく息が切れてる。



(あおぞら……せんぱい……?)


恐る恐る振り返ると、前髪を掻き上げてる人と目が合った。


「お前……車に突っ込んで死ぬ気かよ!」


ぎゅっと後ろから抱きすくめられた。


「勘弁しろよ。心臓もたねぇ」


寄り掛かってくる体が触れる。
サラサラの前髪が首筋に触れ、ポロッと涙が溢れた。




「す…すみません……」


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