これを『運命の恋』と呼ばないで!
何度も何度もごめんなさい。
不注意で至らなくて、無能で足手まといでイヤになる。



「ごめんなさい……奏汰先輩……」


落ち込む。
これ以上にないくらい苦しい。



向きを変えて泣きだした。

先輩の胸の中では泣くまいと、あれほど決めていたのに。



「なつみ……」


愛おしそうに名前を呼ばれる。
その声が切なくて、余計に涙が溢れた。




「……あの」


もう一人の先輩の声がする。
その声から逃げ出そうとしたからきっと追いかけてきたんだろうと思う。



「僕、一言貴方に言っておきたいことがあるんですけど」


言いだした言葉に目を剥いた。
顔を上げると、京塚先輩は真剣な表情で青空先輩を睨んでた。



「何ですか?」


肩を抱いてる腕に力が込められる。
その彼にも目を向けて、ゴクッと唾を呑み込んだ。



「ナッちゃんを大事にしてあげて下さい。絶対に一人にしないと約束して下さい」


必死な表情で訴える京塚先輩の顔をマジマジと見つめ、青空先輩は答えを呟いた。



「言われなくてもそうする」


黙ってろって感じで睨み返し、腰に腕を巻きつけた。



「行こう。なつみ」



軽く会釈をして交差点を歩き始める。
無言のままでいる青空先輩の横顔を見つめ、今のセリフを反復した。



(『言われなくてもそうする』って、どうするつもり?)



貴方はもうすぐ遠い国へ行く。
私とは別れることは既に決まってるのに。


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