これを『運命の恋』と呼ばないで!
(ナツ……綺麗だよ)


目の前を通り過ぎていく彼女と微笑みを交わす。

お父さんにナツを託された青空さんは、彼女の目を見て笑った。



(ああ、いいなぁ。結婚式って……)


何度参列しても気分良くなる。
コレだからメイキャップは止められないんだ。


オルガンの音色は止まり、神父さまの問いかけが始まる。


『健やかなる時も苦しい時も共に手を取り合い、死が二人を別つまで心を尽くし合うと誓いますか?』


『死』という言葉にナツが一瞬ビクつく。
それに気づいた新郎が、ポンポン…と手を優しく撫でた。



『大丈夫だ』


声も出してないのにそう聞こえた。

それを見てたナツの瞳から大きな涙の粒が溢れた。



「誓います」


大きな声を出して神父さまの後ろに佇むマリア様を見上げる。




(……ああ。神様)


祈るような気持ちでいた。


(どうか二人が死で別れることの無いようにして下さい。なるべくその時が遅く来て、占いが当たらなくて良かった…と思えますように……)



ナツ以上に真剣に考えながら式を見納めた。

腕を組んでバージンロードを折り返す二人。

祝福の花びらを振り撒きながら、運命の恋が未来永劫続くことを願った。





海外赴任が迫ってる二人には、披露宴をしてる余裕はなくて、式の後、全員で軽いランチを食べるだけに留まった。



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