これを『運命の恋』と呼ばないで!
「恭平さん、ちょっとそっち見てて」


テレビを指差し携帯を握った。




「もしもし?」


テレビの画面に背中を向けて出た。
電話をかけてきたのは、思いもかけない人だった。



「もしもし!?智花さん!?」


「クレハさん!どうしたんですか!?」


彼女から電話が来るなんて珍しい。

近況を報告するマガジンメール以外に電話はこれまで一切なかったのに。



「貴女の友人の方大丈夫!?生きてらっしゃる!?」


声が真に迫ってる。


「生きてますよ。今日、結婚した相手と海外の赴任先へ旅立ちました」


クレハさんの占い通りにやっぱり婚期が迫ってたみたいで…と、幸せを報告しようとした。



「海外!?まさか南国の方じゃない!?」


私の声は遮られた。


「南国ですよ。シンガポールだって聞いてます」


「それはまずいわ!」

「まずい?」


どういうことですか…と問う間もなく、報道フロアからアナウンサーの声が響きだした。


「日本を出国した航空機が南方の海上でレーダーから姿を消しました。墜落したとみられ、現在航空会社と自衛隊で行方を捜索しております」


(えっ……!?)


携帯を耳に当てたまま振り返った。
航空機の車種とナンバーがテロップで流され、その文字画面を目で追った。



「もしもし?あのね、智花さん……」


右の耳から聞こえるクレハさんの言葉に力が抜ける。

映し出される文字を見つめながら、私は神様を呪った。



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