これを『運命の恋』と呼ばないで!
(うそ……)


出国ゲートをくぐった時のナツの笑顔が忘れられない。

あの笑顔に、私はもう二度と会えないの!?



「昨夜、夢を見たの。女性が助けて…と、血まみれで願うの。見たことある顔のような気がして、今朝からずっと名簿を探し続けてたんだけど……」


クレハさんの記憶に蘇ったのはナツ。

自分の書いた診断書のコピーを見て、ハッと思い出したんだそうだ。


「あの時言わなかったけど、彼女の前世は飛行機事故で終わってるの。南国方面に講習をしに出かけた矢先、飛行機が何らかのトラブルに巻き込まれて墜落して……」


ガクガクと膝が震えてしゃがみ込んだ。

目の前の画面には、搭乗してると思われる人達の名前が映し出され始める。



「順不同でお伝えしております」


繰り返されるアナウンサーの声が、カタカナで書かれた名前を読み上げる。


「ワタナベ トウゴさま、カワベ ナルミさま、トモチカ レナさま、サカタ ハチロウさま……」


老いも若きも同じ口調で呼ばれる。
その音声を聞きながら(まさか、まさか……)と心が否定をし続けていた。




「トモちゃん!!」


ひときわ大きく響いた声を出したのは鶴井君。

見開かれた瞳が振り向いて、その背後に飛び込んできた文字に、ぞっとする様な寒気を覚えた。




「アオゾラ カナタさま、アオゾラ ナツミさま……」




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