これを『運命の恋』と呼ばないで!
「気持ちいい」


ガーゼの隙間からうっとりする様な声が聞こえた。
頭皮のマッサージをしながら血流を良くしてるとこだった。


「頭の疲れが取れる感じがする。智花さんの指には人を癒すパワーがあるね」


誰にでもやってることだったけど、そう言われると嬉しかった。


「ホント!?ホントにそう思う!?」


調子に乗って言うと、ナツは笑いもせず答えた。


「思いますよ。智花さんならいい美容師になれると思う」


お店を開いたら真っ先に顧客になるね…と話すナツの言葉で、私は自分の夢を初めて人に語った。


「23になったらアメリカへ留学するつもりでいるの。向こうでカットとメイクの勉強をしてこようと決めていて」

「うわぁスゴい!英語話せるんだ!」

「まぁね。学生の頃、割と好きだったから」


国分専攻のナツは「尊敬するぅ」と声を上げた。



「智花さんて今何歳なの?」

「私?22だけど」

「22!?私と一つしか変わらないの!?」


シッカリしてる…と感心されながらマッサージとシャンプーを終えた。




「良かったらまた来て。今度はパーマもさせて貰えるよう頑張るから」


すっかり意気投合して連絡先まで交わして別れた翌年、アメリカへ行く私を見送ってくれたのもナツで。




「頑張ってきてね。帰ってきたら必ず連絡してよ」


手を握り合って最後まで手を振ってくれた。


なのに…………



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