これを『運命の恋』と呼ばないで!
狼狽えた瞬間、驚くような言葉を言ってくれた。


「居眠りするくらいなら早く帰って寝た方がいいだろう?」


「…………は、はい」


ぽかんとしたまま返事をした。
先輩はその声を聞いて、直ぐにまたパソコンへ向かう。


(ラッキー!今日は21時まででいいんだ!)


それなら家に帰ってご飯も食べれるし、ゆっくりお風呂にも浸かれる。


(よーし!頑張るぞ!)


俄然やる気を出して書類をまとめ始めた。

残業を終える前に急ピッチで進めた書類の束を見て、青空先輩はホッと息を吐いた。


「よし。記入漏れも計算ミスもない」

「やったー!」


子供っぽく喜んでしまった。


「意外とやれば出来るじゃないか」

「へっ?」 

「時間制限があった方が有能なんだな、お前は」


ぱちぱちと瞼をバタつかせる。
「鬼だ鬼だ」と陰で罵ってた男が微笑んでるようにも見えるが気のせいか?


(これって目の錯覚?)


ごしごし…と手の甲で軽く目を擦って見直した。


「何だ」

「あ、いえ、何でもないです(やっぱり見間違いだったか)」


そりゃそうだ。
鬼先輩の青空奏汰が私の前で笑ったりする筈がない。

私以外の社員の前では柔かな笑みを浮かべているけれど、私に対しては鬼の形相しか見せない人だ。


(寝不足と仕事のし過ぎで疲れたのかも……)


パソコンの電源をオフにしながら考えた。


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