これを『運命の恋』と呼ばないで!
自分のいない所で若山が危険な目に遭っているんじゃないかと思うと気になって仕方ない。

数日間寝不足を繰り返した後で会った若山に、自分の気持ちを伝えられた時はホッとした。



「なつみ……」


抱きながら名前を呼ぶと、ぎゅっと力を込めて抱きつかれた。
小さな体の割に力が強くて、(ああ、愛しいな…)と、心の底から感じたんだ。



………………………………………




「あの時のなつみはいやらしかったなぁ」


飛行機の搭乗口でこれまでのことを思い出しながら呟いた。


「何のこと?」


慣れない外国生活に不安を抱える若山は、ガイドブックから目を離してこっちを向いた。


「初めて抱いた日のこと。自分から迫ってくるなんて思わなかったから驚いた。積極的だったよなぁ、あの時のお前」


ククッと笑いを堪えた。


「な、何を思い出してるんですか!何を!」


真っ赤な顔をして本に伏せる。
俺はそんな若山に擦り寄り、耳元で愛を囁いた。


「なつみが好きだ。どんな不運も引き受けてやるから、安心して任せておけよ」


耳たぶに軽くキスしてやると、恥ずかしそうな目がこっちを向いた。



「私も……奏汰先輩が好きです」


籍を入れても時々先輩と呼ぶ癖が抜けない。
不器用だけど憎めない若山の腰に手を回し、ぎゅっと抱き寄せてやった。



「愛してる」


「わ、私も……」


本で顔を隠しながらキスを交わした。


離陸する30分前の会話だーーー。




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