これを『運命の恋』と呼ばないで!
「何もない……ナッちゃんからも、空君からも……」


ぐっと込み上げてくる涙を感じて目頭を押さえた。
その私の肩を抱いて、大輔さんは力強く慰めた。


「大丈夫だ。生きてると信じよう」


祈るような眼差しに向かい合い、こくっと頷いてはみるけど、不安はますます広がって心の中の闇は大きなっていく一方だ。



「私がナッちゃんを置いていかないよう言わなければ良かった……」


空君一人で赴任するのなら墜落した航空機に乗ることもなかったかもしれない。

数少ない可能性ではあったにしても、そんな風に思えて仕方なかった。


「誰かが言ったからこうなったという訳ではないんだ。それを言うなら俺達にも責任がある。

青空君に異動命令を出したのは俺達幹部社員だ。だから責任があるとしたら、こっちだってそうだ」


ナッちゃんの指導係として奮闘している空君のことを営業部長も大輔さんも認めていると聞かされていた。


「現地社員の教育なんて現地に行ってる社員にやらせれば良かったんだ。新たに青空君を送り込まなくても、いくらでもできた筈なんだ」


悔しそうに手を握りしめる彼に擦り寄る。
これまでオフィス内では、そんなことをしたこともなかったけど。


「とにかく信じ続けよう。少しでも早く情報を集めて、事実確認をするのが先だ」


「……うん」


右往左往する不確かな情報に惑わされながら事故初日の勤務は終わった。


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