これを『運命の恋』と呼ばないで!
「なんで!?どうしてなの!?」


焦る気持ちばかりが増えて、マトモな判断もつかなくなる。


「……先輩、しっかりしてっ!」


開いてる目が閉じ始めた。
黒目に映ってた自分の顔が、どんどん狭まっていくーーー



「ヤダ!ちょっと待って!目を閉じないで!!」


先輩、お願いだから目を開けて!

お願いだからこっちを見て!

私を一人にしないで!

置いて行ったりしちゃイヤーーー!










『……死ぬ覚悟は出来たか?』


前に見てきた夢と同じ声がした。


『お前の不幸を一緒に背負うなんて馬鹿な野郎だな。こいつは』


ククク…と笑い声が響く。



『お前の願った夢はこれで全部叶ったよな。こいつに想いが伝わって結婚式も挙げられた。

友人は同じビルのレストランシェフと同居し始めたし、家族からも見送られて航空機に乗り込んだ。

思い残すようなことは何も無くなったろう?…じゃあ、もうあの世へ逝っても平気だな』



こっちだ…と手を取られる。


この手の感触には覚えがある。



『……待って!あなたは何者なの!?』



悪魔なの!?
それとも地獄の鬼なの!?



『オレか? 何だと思う?』


背中を向けていた声の主が振り返った。


その瞬間、凍りつく様な恐怖を覚えたーー。








『あなたは……』


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