これを『運命の恋』と呼ばないで!
(あのままオフィスに残ってたにしても、お腹が空き過ぎて仕事にならなかったかもしれないもんね)


あれ……?と自分の考えたことに違和感を覚える。


空腹過ぎて捗らない?

もしかして青空先輩は私のそんなところを知っていて、わざと残業を21時までにしようと言ったとか………?


(いやいや、この鬼先輩にそんな仏心がある筈ない)


疲れ過ぎからくる考え込み過ぎだ…と納得して浅漬けをパクつく。


「うん、美味しい」


体が塩気を欲してたみたいで、どうにも箸が止まらない。


「まるで草食動物だな」


横に座ってる鬼が呟く。


「漬物が好きなだけです」


白菜に限らずお新香も梅干しも好き。


「だったら生姜も乗せろよ」


届いたばかりの牛丼の上に置かれた。


「あっ!生姜はダメなのに!」

(何すんのよ、この人!)


「何だ、紅生姜だって漬物だろうが」


勝手に嫌いな物を乗せた鬼が呆れる。


「そうだけど、生姜だけはニガテなんです。噛んだ時の歯触りが気持ち悪くて」


あの軋むような食感。
思い出しただけでも背筋がゾッとする。


「だったら避けてやるよ」


箸で生姜を避け始めた。


「あっ!持って!肉持って行かないで!」

「何だよ、欠片が付いてきただけだろう」

「それでも貴重な肉です」

「呆れる女だなぁ」


そう言いながら一欠片戻してくれる。


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