これを『運命の恋』と呼ばないで!
「えへへ、大きいのくれてありがとうございます!」


嫌いな人だと思ってたけど、結構いいとこあるじゃないの。


「明日も残業して貰わないと困るからな」


成る程、恩着せがましいだけか。


(やっぱ鬼だな。この人)


箸を持って食べ始める。

牛丼っていうのは不思議な食べ物だ。
朝も昼も夜も、いつ食べても美味しい。



「旨いか?」

「最高ですね」


「クス」

(ん……?)


二度目の違和感を覚えた。
今、確かに「クス」って笑い声が聞こえたような……


「何だよ」

「……あ、いえ(やっぱり気のせい?)」


今日はどうかしている。
鬼みたいな先輩と残業して、慣れない夕飯を一緒に食べてるせいだろうか。


(幻聴や幻視に惑わされるようになるなんて)


いよいよ本当に死期が近いのかもしれない。


(私が死ぬ時って一体どんな死に方になるんだろう……)


牛丼を食べながら思いつくままに連想する。


事故死?
病死?
まさか、私に限って自殺っていうのはないよね。

前世では突発的な事故で亡くなった…ってクレハさんは言ってたから、あるとすれば同じ様に突然死ぬとか?


心臓発作で?
或いは何かの事件に巻き込まれたりするとか?


(こんな平和な毎日なのに、私にはもう先がないのか……結婚できる次期も近いというのに、どちらが先に来るのかもハッキリ見えてはいないんだ……)


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