これを『運命の恋』と呼ばないで!
『誠に申し訳ございません。ご心配をおかけして、重々反省しております』


先輩が謝ってるところを初めて目にした。
真剣な表情で謝る横顔を見ながら、救世主でも間違うことがあるんだ…と思った。



(良かった。私の旦那さんはどうやら普通の人みたい)


スーパーマンみたいな人かと思ってたけど、抜ける所もあるんだと思うと安心する。
たまにしかないと思うけど、その度にホッと息がつけそうだ。



「……なんだ?」


電話を切った先輩は不思議そうな顔をしていた。


「ううん、何でもないの。それよりも早く先輩の実家に連絡しないと。私のドジのせいでケータイは一本しかないし、不便だとは思うけど早く」

「言われなくてもするよ。あーあ、きっとコッテリ叱られるんだろうなぁ」



肩を落としながら電話をした。
電話の向こうから聞こえてきた声は、悲しみと喜びの両方が入り混じっていた。


『大丈夫。明日の便でシンガポールへ向かうよ。次は何があっても着いたら直ぐに連絡をするから……うん、なつみにも代わるよ。心配かけてごめん。母さん、元気出して』


涙ぐんでる先輩の手を握った。
困った様な笑みを浮かべ、私にケータイを持たせた。



「代われって」


言葉少なく電話を手渡すと、グシッと鼻を鳴らした。



『もしもし、お義母さん?夏生です』


先輩のお母さんの顔を思い浮かべながら電話に出た。
泣きながら話すお義母さんと言葉を交わした後、智花にも連絡を取った。


< 214 / 218 >

この作品をシェア

pagetop