これを『運命の恋』と呼ばないで！
死ぬのが先か結婚が先かなんて、そんなの考えながら生活するのは嫌だ。
どちらが先に来るとしても、悔いのない様には生きたい。


「どうした？もう食べないのか？」


いつの間にか箸が止まっていた。
振り向くと先輩の丼は既に空っぽになっている。


「もう食べてしまったんですか？」


仕事だけじゃなく食事も早いな、この人は。


「お前が遅いだけだろう。食うならさっさと食えよ」


ズズッとお茶を飲んでる。
その姿を見ながら少し呆れる。

普通はＯＬと食事となると、牛丼屋には来ないと思う。
お酒も楽しめる場所を選択して、もう少し明るい雰囲気で会話しながら食べる筈だ。

なのに、この人ときたら牛丼を特盛りで頼んで無言で食べておしまい。
ビールを飲むわけでもなく、飲んでるのはただのお茶。


（変な人）


今日初めて分かった。
青空先輩は女の扱いがきっと下手だ。

下手だから私を成長させることもできない。
だから、怒鳴ってばっかいる。


（……ということにしておこう。でないと自分の無能さが嫌になる……）


どうせ死ぬのなら仕事が出来るようになっても無駄だ。
同じように出来るなら仕事よりも恋愛ができるようになりたい。

好きな人を作って結婚したい。

智花や両親に祝福されながら、式くらいは挙げたいものだ。


（あーあ、でも、その前に好きになる相手も周りにいないよ……）


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