これを『運命の恋』と呼ばないで!
(えっ……)


思ったのも束の間、何かが砕ける音がする。


カチャーーン!!


割れたものは茶色の破片を粉々にして、辺り一面に散らばっていく。

足先や足首には焦げ茶色の粉が降りかかり、それに混ざるような緑色と赤色のものとが見えた。


(何……?)


地面を見返して上を見上げる。

ビルの上にいる人が、何やら大きな声を発している。



「すみませーーん!大丈夫ですかーー?」


どうやら私に向かって言ってみたい。
でも、これも気のせいだろうか?


ぼうっとしたまま無言でいると、人混みを掻き分けて近づいてきた人に肩を掴まれた。


「おいっ!怪我はないか!?」


声の主を振り向き、ぼんやりとしたまま頷く。


「大丈夫みたいです!」


上に向かって叫んでる。
それから私の方を見下ろした。


「どれだけボンヤリしてんだ!」


呆れる様な声を出してるのに、表情は何処か安心している。
肩に置かれている手も熱くて、ぎゅっと胸の中が痛くなった。



「先輩……」


何でだろう。
怪我も何もしなかったのに、急に涙が出てきてしまう。
気持ちがホッとし過ぎて、上手くコントロールができない。


「大丈夫だから泣くな。ちょっとこっちへ来い」


人混みを避けるように道端まで連れて行かれる。
グスグスと泣き続ける私に自分のハンドタオルを持たせた。


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