これを『運命の恋』と呼ばないで!
総務の決算書類は多岐にわたっているから厄介だ。
いろんな課内の消耗品が、現在も使われているかどうかから調べ直さないといけない。

それでも面倒な計算や照合はないから簡単な仕事だと言える。
昨日の実績計算書のまとめと言い、この仕事と言い、実に先輩は的確な仕事を与え続けている。

それすらも監査までに間に合わせることができそうにない。
そして、明日もきっと残業することになるだろう。



(はぁ…)


後6日間の我慢だと分かっていても、やはり憂鬱さは変わらず。

こうしてる間にも私には死期が迫り、婚期はどんどん遠ざかったいるんだと思うとやりきれない。



「バカ山」


もはや鬼先輩の呼びたいように言わせてやろう。
この一年以上の苦労を労うには、それくらいのお返ししかできないだろうから。


「何でしょうか」


目線を変えずに返事をしてみた。
先輩の鳴らしていたキーボード操作の音は止み、明らかに目はこっちを向いてるだろうと思うのに。


「昨夜はその……悪かった」


聞きづてならない言葉が聞こえ、下を向いていた目線を上げた。


「はい?今何と仰いましたか?」


これまでのタメ口は止めようと決めた。
お詫びの行動その2として、出来ることをしようと思ったからだ。


先輩の顔は私の方を向いていた。

バツの悪い表情をして、でも、やっぱり不機嫌そうに呟いた。


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