これを『運命の恋』と呼ばないで!
「悪かった。そっちについても謝る」


カタン…と椅子から立ち上がり、茶系に染めた髪の頭頂部を見せた。


「ごめん。いきなりで驚いたのもあった」


涙目になりながらその言葉を受け止めた。
先輩は顔を上げ、困ったように微笑んだ。


「まさか、お願いというのが逆プロポーズだとは思わなかったから少し面喰らった。

そんなのはドラマか漫画の中でしかないと考えていたし、占いのこともお前がそこまで悩んでいるとは知らずにいたから…」


何処までも正直すぎる先輩に度肝を抜かれる。
私が先輩に言ったことは、やはり立場としてはマズかったかもしれない。



「………すみませんでした」


言いたいことをあれこれと言ってしまった。お陰で少しだけ冷静にはなれた気がする。


「いや、こっちも酷く拒否ったから悪い」


お互いに目を配って謝った。

私の目に映っている人は、一見穏やかそうな顔をしているみたいだけど気のせいだろうか?


「誤解が解けたところで仕事を始めるぞ!今夜は若山の仕事ぶり一つで、昨夜よりも早く帰れると俺は信じてるからな!」

「えっ…」

「何だよ」

「あ…いえ、何でも」

(気のせい?今、『バカ山』って言われなかった気がする)


立ち上がってた先輩は椅子に座り直し、さっきと同様に規則正しい音を立て始める。

頭の切り替えが早過ぎてついていけないけど、私の頑張り一つで早く帰れると教えてくれた。



(それなら……やるしか無い!)


傷ついた心を掬い上げてくれた先輩。

貴方はやっぱり、私の救世主なのですか?


< 38 / 218 >

この作品をシェア

pagetop