これを『運命の恋』と呼ばないで!
『私の書類作りが遅いと言っては「カメ!」と言って罵るし、小さな計算ミスを見つけたら「小学生でもできる!」と馬鹿にして、発注ミスをしたらしたで「今度やったらパソコン以下だ!」と貶される。

こんなのが日常茶飯事続いてきてるのよ!これを地獄と言わずして何と言えばいい!?』


わあわあ!と機関銃のように喋る私に目を剥きながら、智花は間間で『うんうん』と首を動かし続ける。

一連の訴えを聞き終えた後で、納得したように声を上げた。


『分かった。つまり、毎日のようにいびられ続けてきたって訳か』


『そう!その通り!』


『それで神経がピリピリし過ぎて毎晩のように眠れなくなってしまった…と』


『うんうん』


『それで?だから鹿にぶつかったの?』


『いや、それはちょっと違うんだけど……』


『違うの?』


智花は不思議そうに首を傾げる。


鹿にぶつかったのは智花に話をする3日ほど前だ。

毎日のように青空先輩に罵られ叱られて気が滅入ってた私は、休日にドライブへ出かけた。


愛車のコンパクトカーで山道を気分良く走り、山頂にあったドライブインで美味しい山菜ご飯を食べ、軽くお土産品を眺めて車に戻った。


食後の眠気覚ましに…とガムを噛みながら運転をし始めたまではいいけれど、どうにも眠気が差して仕様がなくなり、この細い道を抜けたら休憩しようと思い始めた時に悲劇は起きた。

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